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『武器としての決断思考』

『武器としての決断思考』を読みました。
決断思考.jpg
特に意味はないですが、前回の記事『決断できる人は2択で考える』と合わせて星海社決断シリーズです笑。
京都大学で人気の教養の講義を一般向けに本にしたのが本書です。ディベートの仕組みを利用した思考法を紹介しています。

本書の構成↓
はじめに
ガイダンス なぜ「学ぶ」必要があるのか?
1時間目  「議論」はなんのためにあるのか?
2時間目  漠然とした問題を「具体的」に考える
3時間目  どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する
4時間目  反論は、「深く考える」ために必要なもの
5時間目  議論における「正しさ」とは何か
6時間目  武器としての「情報収集術」
7時間目  「決断する」ということ

以下にそれぞれの章をザックリと要約していきます。

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ガイダンス
自分の頭で考えて、使い捨てにされる人材ではなく、交換不可能な人材となることで、自分自身を自由にすることが大切である。そのために「知識・判断・行動の3つをつなげて考える」「変化に対応できないエキスパートでなく、本質をおさえたプロフェッショナルをめざす」「『正解』はないことを知り、自分で答えを出す」ことが必要。

1時間目「議論」はなんのためにあるのか?
①ディベートとは、議論によって、正解ではなく、「いまの最善解」を導き出すもの。
人間の認識や意思決定はゆがみやすい。議論により、個々人の考えをぶつけることで修正・より優れたものにしていくことが大切。
②日本人は議論が苦手。誤りの例としては①自分がそう思うから正しい②みんながそういうから正しい③反論をさせない がある。
③議論にルールを加えたものがディベートである。
結論よりも大切なことは結論に至る筋道であって、前提などに変化があれば結論は変えられる。「ブレない」ことそのものに価値はなく、流動的な社会において変化に適応できないことは、」悪くすれば思考停止的であり最大のリスクですらある。

2時間目 漠然とした問題を「具体的に考える」

①何について議論を行うか、決める。
漠然とではなく問題の争点を明確に「×原発をどうするか→○原発を10年以内に無くすべきか否か」「×親の介護はどうするか→親の介護は子供が担うべきか否か」「×結婚はいつしたらいいのか→結婚は20代のうちにするべきか否か」つまり、具体的な行動のレベルで決まることがディベートには向くのである。
※2択は争点が多すぎてディベートの達人でないと難しい。「×文系か理系か→△慶応文か慶応経済か、くらいまで絞れれば可能かも」

②大きな問題から小さな問題へ
「日本の大学へ進学するべきか否か」→「文系に行くべきか否か」→「法学部へ行くべきか否か」→「法律学部へ行くべきか否か」

③複数の問題が同時並行で起こった場合、ひとつひとつの問題について別々に論題を立てる。
「X社への就職か、大学院への進学か」→「X社の内定を受けるべきか、否か」+「大学院へ進学するべきか、否か」それぞれの最善解を基に新たな論題を立てる。

3時間目 どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する

①ディベートではある行動をとった時に生じるメリットとデメリットを比較する。

②メリットの3条件
⑴内因性(なんらかの問題があること) 
⑵重要性(その問題が深刻であること)
⑶解決性(問題がその行動によって解決すること)
※すでに解決している問題や放置しても解決するような問題は条件を満たさない。
この3条件を確認していくと、自分で自分の主張が正しいかどうかチェックできる・相手をうまく説得することができる・ダマされにくくなる。

③デメリットの3条件
⑴発生過程(論題の行動を取ったときに、新たな問題が発生する過程)
⑵深刻性(その問題が深刻であること)
⑶固有性(現状ではそのような問題が生じていないこと)

メリットとデメリットは表裏の関係にある。メリット・デメリットの3条件をきっちりとチェックすることが大切。それぞれを検証し反論を重ねていくことで結論に近づく。

4時間目 反論は、「深く考える」ために必要なもの
①反論は、メリットとデメリットが本当に正しいかどうかを検証するために必要な手順。欧米人は教育で論理を訓練されているため、これがよく分かっているので、烈しい議論 の後には何食わぬ顔で一緒に食事に行く。日本人は反論を人格攻撃とごっちゃにするので人間関係を崩しやすい。

②メリットに対する反論
〈内因性に対する反論〉=そんな問題はそもそもないのでは?
⑴プラン(論題の行動)を取らなくても問題は解決する
⑵そもそも現状に問題はない
〈重要性への反論〉=問題だとしても、たいした問題ではないのでは?
⑶質的に重要ではない
⑷量的に重要ではない
〈解決性への反論〉=重要な問題だとしても、その方法では解決しないのでは?
⑸プランを取っても別の要因が生じるため、問題は解決しない
⑹プランは問題の原因を正しく解決しない

③デメリットに対する反論
〈発生過程への反論〉=新たな問題は生じないのでは?
⑴プランだけではデメリット発生に至らない(他の条件が必要)
⑵プランの影響はデメリット発生に至るには弱すぎる
〈深刻性への反論〉=問題が生じたとしても、たいした問題ではないのでは?
⑴質的に問題ではない
⑵量的に問題ではない
〈固有性への反論〉=重要な問題だとしても、すでにその問題は生じているのでは?
⑴プランを取っていない現状でもその問題は起こっている
⑵プランを取らなくても、将来、その問題は起こる

5時間目 議論における「正しさ」とは何か
好き嫌いや実名匿名、プロアマに関係なく、その主張に根拠があるかどうか、だけが判断材料になる。
②「正しい」主張の3条件
⑴主張に根拠がある→なぜそうなんですか?と聞いてみる。
⑵根拠が反論にさらされている→前章のような反論があること。
⑶根拠が反論に耐えた→意見をぶつけあった後、それぞれの主張を比較し、いまの最善解を決める。
③主張と根拠の間には「推論」がある。
(例)【主張】Bさんはいい人だ 【根拠】お年寄りに道案内していたから
   【推論】人助けをする人はいい人だ
ディベートにおいては相手の【推論】の部分を攻める。
④推論にも大きく分けて3つある
 ⑴演繹…すべての人間は死ぬ→Aは人間である→よってAは死ぬ
 ⑵帰納…猫Aネズミ追う。猫Bネズミ追う。猫C・・・ネズミ追う→猫はねずみを追うものだと言える。
 ⑶因果関係…原因Aがあるとき結果Bが起こる→この時AとBには因果関係がある。

6時間目 武器としての「情報収集術」
証拠資料を集めることが大切。その際、適切な資料を使うこと、関係のないものや間違ったもの、結論しか書いていないものはNG。また資料に頼るだけでなく、自分でも考えること。
ネットやマスメディアの情報を鵜呑みにしたり、みんなが知っている情報に合わせただけでもだめ。「みんなこう思っているけど、本当はこうだ」という情報がいい情報。みんなが知っている情報でも、自分の目的に合わせて組み合わせることで有用なものになることもある。
大学以降の人生では、情報に接したら、それが本当かどうかをまず疑うべき。そうでないと資本主義・消費社会の奴隷になる。

7時間目 「決断する」ということ
①賛否両論あったとしても、とにかくメリット・デメリットを比較して結論を出すことが重要。感情論を排して、客観に徹して比較をした後、最後は質×量×発生可能性で判断。

②最後の最後は自分で、主観で決める
ディベートも絶対的な解を出してくれるものではなく、万能ではない。客観を経て主観で判断するためのもの。最後の最後に自分の人生は自分自身で決めなければならないのだ。
決めるため思考の筋道をつけるディベート。思考の中にこそ人間の尊厳がある。

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「感想」
こういう考え方は、大学院で論文を書く時に重宝しますね。自分の論の筋道が正しいか。どこが反論し得る場所なのか? さらにそういう視点でいると、ゼミで自分の論文計画に対して反論している先輩や先生が実は「自分はこんな感じがするから」というのを根拠に反論しようとしていることが見えて、スル―していい意見ときちんと取り入れないといけない意見を瞬時に判別できて時間の節約にもなります。


参考文献 『武器としての決断思考』 瀧本哲史著  星海社新書
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