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川上量生『ニコニコ哲学』

『ニコニコ哲学』を読みました。
ニコニコ哲学画像.jpg
修士論文の提出がようやく終わり久々の記事更新となりました。
ドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏の著作です。前著『ルールを変える思考法』が面白かったので購入しました。

本書の構成は以下通りです↓
1:KADOKAWA・DOWANGOはこうつくる
2:ニコニコ動画のつくり方
3:ニコニコはこう動かす
4:バカにはバカと言い、計算ずくでバカをやる
5:論理をとことん考える
6:一億光年先を考える

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本質を突きつめて考えた結果「夢は『もっと寝たい』」である川上氏の思考の道筋が垣間見える本書であると思います。その中で僕が自分の置かれた状況とも照らし合わせて参考にしたいと考えたのは、競争に対する川上氏の考えかたです。

「才能は希少性ですね」
「オープンなマーケットで、みんながコンテンツをつくれるようになるほど、コンテンツの実質的な多様性は減るっていうのが僕の持論です。数が多いということは、ある解に向かって自動的に収束していくってことですからね」
という二つの発言に象徴されるように、厳しい競争が起こるとそれだけ成功のために多くの努力が必要になりかつ成功の可能性が下がるため、成功は難しくなるという、頭では分かっているけど、僕のような一般人は忘れがちな原則を、川上氏はきちんと意識しています。始めから競争の少ないフィールドで勝負しようとしているわけですね。川上氏は競争の激しいフィールドの例としてスポーツの場を挙げています。

「才能のレベルがとても高くても、競争相手がたくさんいるジャンルで認められるのは大変ですよね。例えばプロ野球選手は裾野が広いから大変ですよ」
「こういう世界では、天才であればあるほど大してすごくないんですよ」
「100メートル走で考えると分かりやすいと思うんですけど、100メートル走って世界的なレベルの選手になればなるほど、縮まるタイムっていうのは減っていきますよね。最終的には、コンマ1秒の差で天才かどうかが決まる。人間の能力っていうのは、ある程度まではみんな同じところまで伸ばせるんです。そこから薄皮1枚分だけ突きぬけた人が、天才とよばれる」
人間の能力がある程度正規分布しているため、皆が参入してくる場所で成功するのは非常に難しいし、成功のための道筋も固定化されやすくなるということです。だから小説家になろうというサイトの投稿小説でも上位は皆同じようなストーリーになっていたり、ニコニコ動画でも初期に参入した人が有利で今から成功するのはハードルが高くなっていると言います。ちなみにブログにしてもそうで、文章能力の高い人が今からそれなりに努力しても有名ブロガーになるのは難しい状況にあるようですね。
川上氏は京大工学部卒で受験の勝ち組なので、単純な地頭も良いことは間違いないのでしょうが、こうして、自分のしていることをメタレベルの視点で捉えて、割の合わないガチンコ勝負を避けつつ、新しいフィールドで成功をおさめるという能力が氏の頭の良さの一つの特徴なのかもしれません。
川上氏は人間の能力がある程度同じというこの視点で起業についても語っています。川上氏自身はニコニコ動画を始める過程でいくつも想定されたリスクを細かく検討していたと言います。

「それぞれについて、しくじる可能性は何パーセントで、ダメだったときにリカバリーできる方法はなにがあって、リカバリーできる可能性はどのくらいなのか。こうやって考えていったら、ある程度リスクが正確に見積もれるんですよ」
それに対して多くの人は

「『賭ける!』という強い思いで思考を停止しちゃうんですよね(笑)。大きな間違いです。そういうときこそ考えないと。必要なのは、勇気でもなんでもなくて計算です」

川上氏は成功には勇気よりも計算という経済合理性が重要だと考えているのである。計算をすれば自分のやろうとしている起業がどのようなリスクの期待値を持っているかが分かる。ほとんどの人はそれを把握せずに、ギャンブルとして起業を捉えているが、始まる前から実は終わっている起業が多いという。

「例えば年間約100万社が創業して、約50社が上場するとします。そうしたらそれを聞いた人は、確率は2万分の1だ、と思う。俺はその0、005パーセントに賭けるんだって発想をするんだけど、実際の確率はそれよりさらに低いんですよ。その成功する50社って、そもそも独自技術を持っていたり、バックアップがあったり、人材がそろっていたりするんですよ」

ミもフタもないような印象ですが、人間の能力はある程度同じで、そこから頭ひとつ抜け出そうと思えば、経済合理性に基づいて他人と違うフィールドに行かなければならないという、川上氏の基本的な前提に基づけば自ずと出てくる解だと思います。

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修論を出し終わって、ようやく就活生になった僕ですが、僕の就活している業界は、1月頃から次年度の求人が始まるという短期決戦型構造の上に、現職の心理士の求人が多く、半人前以下の修士卒の求人が非常に少ないです。そのため、例年、修士卒見こみ可の公募に人が殺到するということになると聞いてはいたのですが、この前実際に行ってみたら、やはり数人の募集に20人程度が集まっていて「これは厳しいな」という様子でした。公募のサイトに掲載された求人はガチンコ勝負の場になってしまっていて僕の真っ白な履歴書の戦闘力じゃ到底勝てるゲームじゃないですね笑。アルバイト先のコネに頼るとか、公募サイトではなくその組織自前のサイトに乗っている情報を探すとか、独自の情報を使う工夫をしないといけないですね。
夢や希望が湧いてくる本ではないですが、次にどうしようか、と考える時にヒントになると思いました。

引用・参考文献 川上量生,2014,日経BP,『ニコニコ哲学』

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